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真実とは好都合な事

別の頁に書いたように、英単語は漢字の延長に過ぎないと思っている節のある中学生（高校生）が多い。だから実際、英単語を覚える際に、ひたすら書く。 　最初はそれで仕方ないだろうが、いつまでも続けているのは、おかしい。綴りの読み方に規則性がある事に気付けば、そんなに退屈な事はしなくて済む。 　という話を、ある生徒にした。これが大失敗。 　 　私はその子に綴りの読み方を教え、能率的に英単語が覚えられるようにしてやろうと思って、こんな事を話したのである。 　ところが、せっかく教えても、その規則性を全然覚えない。根がズボラだから、書いて覚える事もしない。いつまでたっても、ちっとも語彙が増えて行かない。 　 　そんなあるとき、学校で言われたらしい。「何度も繰り返し書いて、しっかり英単語を覚えなさい」と。 　それに対して、その子は図々しく反論したと言う。「それじゃ、漢字の勉強と同じじゃないですか。それは変です」と。 　 　どうやら、私が入れ知恵した格好になるようだ。 　だがな、Ｓ君、それなら何故綴りの読み方を真面目に覚えないの？ 先生はね、あの話をね、君が英語の勉強を拒否する事を正当化するのに利用するとは、思ってもみなかったよ。 　 　以上、平成十年頃の話。 　だが、Ｓ君が特別だとは、私は思わない。長い話の一部を、それも、自分にとって好都合な部分だけを抜き出して、自分が主張したい事の根拠に利用するなんて、よくやる事だ。 　要点（だけ）を要領よく記憶する勉強の仕方というのは、この愚に陥る危険と隣り合わせである事を、知っておいた方が良い。 　 続く

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