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教わると判らなくなる(2)

 さて、煎じ詰めれば、Kちゃんは“速さ”の授業で、「公式に当てはめて計算するものなのだ」と教わったとしか考えられません。速さとは何か、速さとはどのような測り方であるか、という点は御座なりだったとしか考えられません。
 逆に、速さの考え方をしっかり理解させる授業であったならば、Kちゃんは「何を殊更教えてるんだろう? 当たり前の事を…」とは思ったかも知れませんが、速さの単位を変換する問題が解けなくなるなんて、とても考えられません。くれぐれも、“速さ”を教わる前のKちゃんは、速さの単位を変換する問題なんて難なく解いてしまったのですよ。聴いていると、考えの筋道も正確ですし、あれは“速さ”を自前で理解していた事は間違いありませんでした。
 
 それが、解けなくなった……。
 「それは、その手の問題を授業ではまだ扱っていなかったからだ」
などという言い訳は通用しません。速さの考え方を理解させぬうちに公式を持ち出し、それによって「速さの問題は公式で処理するものだ」という間違った印象を与えてしまったとしか考えられませんから。それに、速さとは何かが理解できれば、どんな計算をすれば良いかは自動的に判るようになって、公式に頼る必要なんてありませんから(頼ると処理は速いでしょうが)。
 しかし、「手っ取り早く問題を解く」事を主眼とした授業なら、どうなるでしょう?
 そう、公式を覚えさせ、「これに当てはめれば答えが出るんだ」となります。いわゆる詰め込みです。これなら何事も、考え方を子供達に理解させなくても答えを出させる事が可能になりますから、授業は楽です。そして、一応正解が出るようになります(九割方の子は、どうせスグに出来なくなりますけど)から、教える方も教わる方も、なんとなく納得してしまいます。
 ただし、真っ当な教育者なら、良心の呵責に耐えられないはずです。また、自分の受けている教育に疑問を感じて、教育を拒否する子も出て来るかも知れません。そういう子を、落ちこぼれと呼んではなりません。
 
 さて、Kちゃんですが、自分の受けている教育に疑問を感じる程には気が利かなかったようです。悪い意味で素直に、授業を受けて(真に受けて?)しまったようです。“速さ”の問題は三つの公式のどれかに当てはめて解くものだ、と思い込まされてしまいました。
 前回書いた通り、Kちゃんにしてみれば、速さの単位を変換する問題なんて特別な知識を要するものではなかった訳です。だから、何の印象も残らなかった。そこへ来て、授業で“速さ”が扱われ、Kちゃんが心新たに知識を取り入れたと思ったら、「公式で処理するもの」だった訳です。これでは、前週に出来た問題が出来なくなるのも、もっともな話です。
 
 思考を形式化させ、機転が利かないようにする――これが、「手っ取り早く問題を解く」事を主眼とした授業の効果です。確かに、問題を解く事は物事を学ぶ上で有効策です。でも、何の為に問題を解くのか、教育者たるもの認識すべきでしょう。これが次回のテーマです。
 
続く

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