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ここを教えてくれ、という要望(3)

「小さい頃から、みんなして塾に通ってるのに、なんで学力が低くなってるの？」 　とは、学力低下問題が最も騒がれていた頃、身内の者から受けた質問である。私は即座に、 　「そりゃそうさ。その場しのぎを教えてばっかりなんだから」 　と答えた。ただし、真意を述べれば長くなる。 　 　生徒から「ここを教えてくれ」とか「コツを教えてくれ」と要求されても、私は時には無視する。職責を果たしていない訳ではない。生徒の現状からして、教えても無駄だと思えば教えない。合理的に判断しているつもりでいる。 　繰り返し書くが、彼等が知りたがっているのは明日の試験を楽に切り抜ける術であって、実に虫がいい。付け焼き刃の得点力が欲しいだけ。それが土台無理な要求である事を、御前、知らないだろ。 　だからいつまでも、「やり方」とか「解き方」にしか興味が無いんだよな。きちんと学力が向上するように、こっちは配慮してるのに、人の言う事ちっとも聞かないで、試験の前にだけ焦って「あれ教えて、これ教えて」。教えられない訳じゃないが、御前の学力が弱い限り、教えたって糠に釘。如何に付け焼き刃の得点力と言っても、詰め込みとも言うが、これだって、学力という基盤の出来具合に応じて身につくもんだ。 　 　などと今はハッキリ書いてしまう私だが、教え始めたばかりの頃は、無駄な事も結構した。と、今だから白状してしまおう。学力が上向き、それを基に得点力をつけ、成績が目に見える形で上がるようになるまで、根気よく教えるしかないのである。 　ところが、生徒本人の根気が続かなかったり、親の根気が続かなくなったりする。こういう場合、それまで力を尽くしてきた事が空しくなる。 　 続く

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