ここは、アロング家庭教師センターの主宰者が、教育について思う事を書き綴るサイト

アロング家庭教師センターの業務内容等につきましては、本サイトを御覧ください。

今の子、昔の子(3)

 するとやはり、教材と言うよりは商材の匂いが強いが、それは措いておき、ここで持論。
 
人の能力の発達には、たどるべき道がある。
それを無視して教育をすると、無駄になるどころか、
発達するはずの能力が発達しない(※1)

 根拠を挙げるとすれば、まず、ネコを使った実験。
 生まれたばかりのネコを、まずは暗室で育て、その後は数週間以上縦縞しか見えない環境で育てる。そして視覚皮質一次野のニューロン反応特性を調べると、次のように成っている。
 垂直線に最もよく反応するニューロンが一番多く、また、垂直から三十度の範囲内の傾きに反応するニューロンが大部分を占めている。なお、普通の環境で育てられたネコでは、どの方向にも選択的に反応するニューロンが均一に存在している。
 この実験から、成長段階で“入力”が無かった要素については、認識が困難(あるいは不可能)なのだと言えよう。人も同じはずである。そして、認識すら困難なものに対しては、能力など育ちようがない。たどるべき道があるのだ。
 
 もう一つ根拠を挙げれば、絵や写真を見て(つまり平面を見て)立体・空間を「感じられる」理由である。
 これは経験に基づく。実は、乳児は視力が未発達(※2)な事もあって、何を見ても平面的にしか見えていないのであるが、見えるものに手を伸ばし、触覚に頼りながら視覚でも立体を認識するようになる。あるいは、自分の足で移動してみて空間を知る。こんな事を繰り返しているうちに、どう見えたらどんな形状なのか、どう見えたらどの程度離れた所なのか等を経験的に学ぶ。二次元の画像を見て立体・空間を「感じる」能力は、この経験的学習によって得られる。たどるべき道があるのだ。
 余談になるが、皮肉っぽく言えば、視覚はその程度にしか当てにならない。だから錯視が起きる。起きたところで視覚に異常を来たした訳ではない。たどるべき道をたどった結果だろう。
 
 私も職業柄、問題を読んでもイメージがわかない子を多く見て来た。しかし私は、だから新型の教材が必要だ、とは考えない。育ち方(育て方)がくるってしまったのだと考える。
 たとえば、生まれて間もない子供に乳幼児向けのビデオ教材などを見せて、それで熱心に教育している気になっていないだろうか。これが無駄である事は、もうお判りだろう。それどころか、育てるべき能力を育てないまま無為に時間が過ぎた事になるかも知れない。
 とにかく、まずは最初に“体で知る”事が必要なのである。しかし、これは軽んじられているか、忘れられている。学力低下の一因が、こんな所にも潜んでいそうだ。
 
 
※1 これを頭において、コンピューター教育についての意見を読んでいただけたら幸いである。
 
※2 目の発達は、八歳頃にやっと終わる。つまり目が完成し、大人並みの視力を得る。また、目が左右に並んであり、だから立体的に見えるのは事実だが、生まれつき立体的に物を見る事が出来るのではない。左右の目がわずかに異なる像を得て、それを「融像」して立体的に見る能力が完成するのも、八歳頃である。
 

Previous Top Page Next

当サイト内の画像やテキストを転載する場合は、事前にご連絡ください。
連絡先は、本サイトに記載してあります。
無断での転載は絶対にやめてください。


































































end
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送